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相続が発生したらビル売却……とならないための相続対策

ビルオーナーが所有している不動産は、不動産そのものに価値があることはもちろん、毎月収入をもたらす貴重な財産です。相続が発生したら次の世代に引き継がれ、その先もさらに収益を生み続けていきます。今回は、長期間にわたって定期的な収益を生むこの優良な資産を次の世代に遺すために、今から考えておきたいことを紹介します。

(写真=Anna Klepatckaya/Shutterstock.com)

不動産は現金よりも相続税評価額は下がるけど……

不動産は現預金と比較した場合、相続税における財産の評価額が低くなることを耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。現預金は、残高そのものが評価額となり額面すべてが相続税の対象となります。しかし、テナントビルの場合、建物は「固定資産税評価額-固定資産税評価額×借家権割合(30%)×賃貸割合」が相続税評価額です。

固定資産税評価額は新築時の建築費用の約7割程度となっていますので、空室がない場合(すなわち、賃貸割合100%)には建物の相続税評価額は新築時の建築費用の約5割ということになります。また、土地については「正面路線価×地積×各種補正率等」が「自用地(自宅等、自己使用の土地)」の評価額となりますが、テナントビルが建っている土地の評価は「貸家建付地」です。

そのため、「自用地評価額-自用地評価額×借地権割合×借家権割合(30%)×賃貸割合)」となります。路線価は、時価の約8割となっていますので貸家建付地の相続税評価額は時価の6割程度です。このように、現金よりも評価額を抑えることができる不動産ですが、特に土地については面積や路線価などによっては評価額が大きくなるケースがあります。

このようなときに問題となるのが相続後の納税資金の問題です。納税資金を賄えるだけの現金を遺すことができれば問題ありません。しかし、そうでない場合には不動産を引き継いだ次世代の資産から納税資金を捻出することになります。さらに、資金が準備できないとなった場合には不動産を売却せざるを得ないということにもなりかねません。

今から確認しておくことは

・不動産の相続財産としての評価額はいくらになるのか
・不動産以外の資産は総額いくらあるのか
・それによって相続税がいくらかかるのか

上記のような内容を事前に確認しておくことが必要です。そのうえで次のことも検討しておきましょう。

・納税資金は準備できているのか
・納税は誰の資産で行うのか
・準備できていない場合はどうやって準備するのか

これらにあわせて、「誰がどの資産を相続するのか」について遺産分割案の作成をしておけば、財産を巡って争いが起こることも未然に防ぐことができます。また、不動産はほかの資産と違い定期的に多額の現金を生み出してくれることが魅力の一つです。現時点の財産の総額を把握したうえでキャッシュフロー表を作成して、家賃収入による資産の増加を確認する必要もあります。

資産が増加すれば、当然ながら相続税の負担も増加しますので、今後の資産残高の推移を確認することは重要です。事前に把握しておくことで生前贈与などの対策をとることができ、税負担の軽減やスムーズな財産承継も可能になります。生前贈与については、暦年課税贈与であれば相続開始前3年以内の贈与財産が、相続時精算課税贈与であれば贈与した財産が、それぞれ相続時にはほかの財産と合わせて相続財産として計算されます。

しかし、いずれも贈与時の「時価」です。不動産については、今後の土地価格の上昇や家賃収入による資産の増加などを考慮して、相続時精算課税贈与も活用できるケースもあります。

できるだけ早めの対策が必要

相続は、いつ起こるかわかりません。また、せっかく優良な不動産を後世に遺したとしても、納税資金が準備できずに手放すことになっては意味がありません。現時点で相続が発生した場合の税負担や今後の資産額の推移などを早めに確認し、さまざまな相続税対策を立てておくことが大切です。また、相続税と贈与税の負担を比較して「生前贈与を行ったほうがよいか」など、専門家のアドバイスを仰ぐことも必要となってきます。