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賃貸ビルの相続の基本①建物はどう評価する?

賃貸ビルオーナーが気にしているテーマの一つに保有不動産の相続が挙げられるでしょう。相続税の計算においては財産評価がカギとなります。今回は、建物の財産評価について解説します。

(写真=Flamingo Images/Shutterstock.com)

賃貸ビルの相続税対策の第一歩は財産評価額を知ること

保有賃貸ビルの相続税対策について考える場合、その建物の財産評価額を知ることからはじまります。なぜなら、相続税は課税対象となる相続財産の評価額を基準に計算されるからです。そしてその評価額を圧縮することが、相続税対策になるのです。相続財産の評価額を把握せずして節税対策をすることはできません。

相続税の申告・納税義務は、相続の対象となる正味の遺産額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合に発生します。正味の遺産額とは、亡くなった人が残した全ての財産から借入金などの債務を差し引いた額です。正味の遺産額が基礎控除額を超えていない、つまり相続税額が0円なのに節税策を講じるのは時間の無駄になります。

保有物件の合理的な相続税対策には、その物件の財産評価額を把握していることが必須なのです。

賃貸ビルの建物はどう評価される?

賃貸ビルの建物の評価は、相続税法上、次のように決められています。

固定資産税評価額

賃貸ビルを含め、すべての建物についての財産評価については、次のように算定されています。

固定資産税評価額×1.0

つまり、毎年お手元に届く固定資産税の課税明細書からおおよその建物の相続税評価額を知ることができます。

貸家は借家権割合30%や賃貸割合を差し引く

ただし、賃貸ビルは他の自家用の建物と異なる点があります。それは、「他人に貸し出している」という点です。他人に貸し出しているということは、賃貸している部分については、たとえオーナーであっても自由に立ち入りしたり、使用することはできません。そこで、相続税法では、この「自由な立ち入りや使用ができない部分」、すなわち借家権割合や賃貸割合を加味して建物を評価することになっています。

借家権割合は、戸建て・アパートいずれの形態であっても貸家について用いる割合です。国税庁が公示する財産評価基本通達により、一律30%と決められています。賃貸割合は、賃貸アパートやマンションのように、入居中の部分と空室の部分が混在している貸家について用いる割合です。

例えば、1,000万円の賃貸アパートで相続開始時に10室中8室が入居中であった場合、その賃貸アパートの相続税法上の財産評価の計算式は次のようになります。

1,000万円×(1-30%×8室/10室)=760万円

空室があると評価額が上がるので注意、ただし例外あり

なお、財産評価は「形式」ではなく「実質」で行います。すなわち、賃貸アパートであっても入居者が少なかったり、あるいはいなかったりすれば、その分評価額は高くなります。

先ほどの1,000万円の賃貸アパートの例でいうと、相続開始時に10室中3室しか入居がない場合、この賃貸アパートの相続税法上の財産評価額は次のようになります。

1000万円×(1-30%×3室/10室)=910万円

つまり、5室の空室の増加が、賃貸ビルの評価額を1.2倍近く上昇させることにつながるのです。

ただし、次のような要件を満たす場合は「いつも入居者がいるけど、このときはたまたま空室になっただけ」と見なされて、入居者がいるときと同等の財産評価を行うことができます。

  • 各独立部分が課税時期前(=相続開始時前つまり「被相続人が亡くなった日」より前)に継続して賃貸されてきたものであること
  • 賃借人の退去後すみやかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていないこと
  • 空室の期間が一時的な期間であること(課税時期前後の1ヵ月程度など)
  • 課税時期後の賃貸が一時的なものでないこと

この要件を相続開始時に充足するため、賃貸ビルのオーナー側としては、空室が出たからといって放置せずに、すみやかに「入居者募集」の案内を出すことが必要となります。小さなことですが、こういった作業の積み重ねが相続税対策につながるのです。