アフターコロナ、 withコロナ時代に突入し、あらゆる産業にパラダイムシフトが起きるといわれている今。特にビジネスモデルの変革が迫られているのが飲食業界です。これに伴いビル経営の常識が大きく変わる可能性も。飲食テナントのニーズ変化をテーマに考察します。
前年同月比、約4割減。飲食業界を襲ったコロナ感染の影響
飲食業界は、宿泊施設や旅行業界などと並んで新型コロナウイルス感染の影響が大きい分野といわれます。日本フードサービス協会によると、2020年4月の外食産業の売上は前年同月比−39.6%でした。
ただし、同じ外食産業でもカテゴリによってマイナス幅に大きな差があり、ファーストフード系は−15.6%減なのに対し、ビアホールは−95.9%減、居酒屋は−90.3%減と凄まじい落ち込みを見せています。
いずれにせよ、大半の飲食店が売上で大打撃を受けたのは間違いありません。今後、コロナ感染の第2波、第3波が警戒されるなか、数多くの飲食店がテイクアウト(持ち帰り)やデリバリー(宅配)へ業態を変更しようとしています。
出前館とウーバーイーツの利用者は緊急事態宣言後、約6割増加
デリバリーを行う飲食店には、大きく「デリバリー専門サービスを利用するスタイル」と「自前でデリバリーを行うスタイル」があります。
2大デリバリー専門サービスは、「出前館」と「ウーバーイーツ」でさらに「楽天デリバリー」などがこれを追随しています。日経新聞によると緊急事態宣言後、出前館とウーバーイーツの利用者は約6割も増加。もともと伸びていた市場がコロナ感染の影響でさらに拡大、日本人の生活に必須のサービスとして定着しそうです。
「出前館」はもともとデリバリー注文を代行するポータルサイトとして1999年に創業した、国内フードデリバリーのリーディングカンパニーです。現在では、新聞配達員や休業中飲食店の従業員を活用し、デリバリー機能を拡充しています。直近では47都道府県で展開、約2万1600店が加盟しています。
ウーバーイーツは日本のフードデリバリーに2016年新規参入し、一気に認知度を拡大しています。展開地域は16都道府県に止まりますが、加盟店は約2万店と出前館に肉迫しています。
自前でデリバリーサービスを立ち上げる支援制度も広がる
このようなフードデリバリー需要の高まりのなかで、自前でデリバリー機能を持とうとする飲食店も出てきています。そして、このような飲食店をバックアップする取り組みも各自治体で見られるようになってきました。
たとえば東京都では、デリバリーやテイクアウトなどを開始する中小の飲食店に対し、最大100万円の助成金を提供(助成割合は経費の5分の4以内)。この助成金は、広告費や宅配用バイクのリース代などに利用できます。※最終受付:2020年11月25日予定。また、さいたま市ではデリバリーを始める飲食店に対し、電動アシスト自転車や原付バイクの無償提供を行うことを発表しています。
このような制度やデリバリー専門サービスを活用し、デリバリーを行う飲食店がさらに増えると、テナントのニーズ変化が起こる可能性もあります。一例では以下のような変化が考えられます。
デリバリーの拡大で飲食テナントのニーズが変わる? 3つの可能性
1.飲食店に不向きだったテナントが人気になる
飲食店といえば、人通りの多い路面店が有利の傾向が強かったですが、今後はデリバリー中心の「立地にこだわらない飲食店」が増える可能性も。人通りの少ないビルのテナントでも周辺に住宅地やオフィスなどがあれば、デリバリーで売上を確保することができます。
2.コンパクトなスペースのテナントが注目される
店内飲食を前提にした飲食店はある程度の座席数が必要のため、面積がなければ難しいというのが今までの常識でした。デリバリーやテイクアウト中心の店であれば、コンパクトな方が効率的です。これまで飲食店として見向きもされなかった手狭なテナントが注目される可能性もあります。
3.駐輪場や駐車場があるビルのニーズが高まる
自前でデリバリーサービスを実施する飲食店が増えれば、電動自転車やバイクを止められる駐輪場や、デリバリーカー止める駐車場付きのテナントのニーズが高まる可能性があります。
上記はあくまでもシミュレーションです。飲食業界のビジネスモデルが本当にこれから先大きく変わるのか、従来の店内飲食中心に戻るのかについては判断が難しいところです。感染や経済の状況を細かくウオッチしながら動向を見極める必要がありそうです。
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